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『ハロー、僕は生きてるよ。 ~イラク激戦地からログイン』

こどもだった頃、とても好きで何度も繰り返し読んだ本の中の一つに『ちいさいモモちゃん』がある。私は途中までしか読んでいなかったのだが、モモちゃんシリーズは6巻まであると知って、自分でも読みたいし、こどもたちにも読んであげたい、というわけで買い揃えた。こどもたちもとても気に入って、毎晩リクエストするので、3巻まで読み進んだ。
モモちゃんシリーズは、かわいらしい話やおもしろい話だけでなく、重苦しいテーマの話もあって、大人になった今はこどもにこんな話がわかるのかな?怖がっちゃうかな?と思うのだが、1号も2号も嫌がることもなく聴いている。考えてみればこどもだった私も、こどもなりにいろいろ感じながら読み、気に入ったからこそ繰り返し読んでいたのだろう。
そんな重苦しい話の一つに、戦争の話があった。テレビで戦争のニュースを観たモモちゃんは、ママに不安を訴える。戦争はおうちまでくるの?こわいよと泣きじゃくるモモちゃんに、遠いところだから来ない、もし戦争がそばまで来たらだめって怒るからとママは言い聞かせるのだが、モモちゃんは言う。

でも、どこかでしているんだよ、それなのに、だめ!ってママ、いわないの?はやくいわないとみんなしんじゃうよう。

これには頭をガツンと殴られたような気がした。
もし、こどもたちに同じことを聞かれたら? ちゃんと、だめ!って言ってるよと答えたい。でも、ほんとに、ちゃんと言っている?

そんなことを考えながら読んだ本が、『ハロー、僕は生きてるよ。 ~イラク激戦地からログイン』(著者/カーシム・トゥルキ、編訳/高遠菜穂子・細井明美、大月書店)。
この本は、モモちゃん風に言えば、自分の国、自分の街、そして自分の家まで戦争が来て、巻き込まれてしまったイラクの若者が書いたものを、遠くだから大丈夫、自分には関係ないと知らんぷりするのではなく、だめ!って言っている人たちが翻訳して作られたものだ。
内容はタイトルのとおり、イラク激戦地で暮らす著者が英文で発信していたブログやメールをまとめたもの。そこに書かれていること、報道されることがなかったイラクの実情は、読むことすら辛いと感じるものだった。
けれど、そんな状況でも、著者は少しずつ、武力では何も解決できないという考え方に変わっていったそうだ。2003年4月にバグダッドが陥落した頃には怒りと報復の気持ちでいっぱいだったし、ときには非暴力で何ができるのかと迷うこともあった。でも彼は「僕は、暴力を拒絶し、平和を選ぶ」と言っている。翻訳者の一人である高遠さんは、あまりにも理不尽なことが多いから葛藤はあるだろうと言う。けれど、広島へ行ったときには「イラクの新憲法にも9条のようなものを入れたらよかったのに」と言っていたそうだ(そのときにはもう新憲法は制定されてしまっていたけれど)。そうして平和のために活動を続ける著者は本当に勇気ある人だと思う。
そんな著者の言葉で印象に残っているのは、

僕の両手はいつも「平和」にしておかなければならない。

というもの。人々を支援するために両手を空けておかなければならない、手も心も、銃で多忙にしておくべきではない、というのだ。
頭で考えているだけではなく、平和のために、人々の役に立つために、行動しようという気持ちが伝わってくる言葉だ。
モモちゃんの問いかけ、願いに応えるのは簡単なことではないけれど、私も心と両手を平和にしておいて、何ができるか考えよう。
by roki204 | 2008-10-05 00:34 | 本や映画
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