背の低いセイタカアワダチソウ、というのもなんだかおかしなものだけれど、近頃、小さいセイタカアワダチソウを見かけることが多くなった。
北アメリカ原産の帰化植物であるセイタカアワダチソウ。ブタクサという別名を持つことから、別の種である本物のブタクサと混同され、花粉アレルギーの元凶と勘違いされていたこともあり、いまだにあまり評判は良くないようだ。実際は虫媒花だから風で花粉が飛ぶことはほとんどなく、アレルギーとは関係がないとされているのだけれど。 私は小さい頃、本物のブタクサが原因のアレルギーで、よくじんましんが出てしまっていた。その頃、両親はセイタカアワダチソウも・・・という話もどこかで聞いたのだろう。「ブタクサだけじゃなく、セイタカアワダチソウにも触っちゃいけないよ」と言われていたのだが、そのとき教えられた植物は別のもの。記憶を頼りに調べてみると、ギシギシだったのじゃないかと思う。しばらくして間違いに気づいたけれど、両親の二重の間違いのせいで、私は本物のセイタカアワダチソウを意識して見たこともなく、アレルギーとを結び付けて考えたこともなかった。 それにも関わらず、私がセイタカアワダチソウにいいイメージを持っていなかったのは、子どもの頃に読んだ瀬尾七重の短編(たぶんタイトルは『かやおばさんの庭』)が原因だ。見知らぬ女の子が庭に入り込んでいて、だんだん人数が増えていき、いつの間にか庭いっぱいになってしまっている。その女の子というのが実はセイタカアワダチソウで、「出て行かないわ、出て行けないわ」と歌う。児童文学なのに、ハッピーエンドではないちょっと後味の悪いラストが強烈だった。そのことが、外来種であり、そこにもともとあった在来種がなくなってしまうほどどんどん広がってしまうという話と結びついて、悪者で駆除すべきもの、と思うようになっていた。 と言っても、ずっと私はどれがセイタカアワダチソウなのかということを知らずにいた。秋になって、一面に広がる黄色い花を見て、きれいだなあ、あれは何ていう花なんだろう、と思っていたものが、実はセイタカアワダチソウだったと気がついたのは、ずいぶん後になってからのこと。気がついたときには、これがあのやっかいものの・・・とは思ったものの、きれいでいいなあという思いが消えることはなかった。始めは観賞用に導入されたという説もあるらしいが、それもあながちでたらめでもないんじゃないだろうか。 同じ属のアキノキリンソウの別名アワダチソウに、背が高いからと「セイタカ」をつけて和名としたセイタカアワダチソウ。4m以上になることもあるそうで、その高さが余計に「やっかいものがはびこっている」感を強くしている、と思っていたので、せいぜい30~40センチくらいのミニサイズのものを初めて見たときにはちょっと驚いた。そこだけ土地条件が悪いのかなと思っていたけれど、どうやら小さいものがあるのはうちの周りだけではないらしい。 仕事の関係でセイタカアワダチソウのことを知りたくてネットで調べていたら、アレロパシーのことが書かれているものがたくさんあった。アレロパシーとは、ある植物が他の植物の生長を抑える物質を放出したり、あるいは動物や微生物を防いだり、引き寄せたりする効果の総称だそうで、セイタカアワダチソウは根からcis-DME(シス-デヒドロマトリカリエステル)という化学物質を出し、周囲の植物の生長を抑制するのだそうだ。 ところが、この物質は自身の生長も抑制してしまい、「自家中毒」を起こしてしまうことがあるというのだ。このアレロパシーを持つ植物はほかにもあり、そういえばニセアカシアも自家中毒を起こすことがあると聞いたことがある。このアレロパシーのせいでススキがなくなってセイタカアワダチソウだらけになってしまったところで、何年もたってからセイタカアワダチソウが消えてしまい、またススキが生えてきた、ということもあるようだ。 小さくなったこともアレロパシーで説明できるのかもしれないが、一つ、おもしろいことが書かれているページを見つけた。 それによると、セイタカアワダチソウは根を深く伸ばし、地下50センチくらいのところから栄養分を取るのだそうだ。在来種ではそこまで深いところから栄養分を取る競争相手がなく、またその深さというのはモグラやネズミが穴を掘って活動していたところで栄養が豊富にあったので、セイタカアワダチソウはどんどん大きくなり、数を増やしていった。ところが、セイタカアワダチソウはその深さの肥料を使い果たしてしまった。栄養分を供給するはずのモグラやネズミも減ったので、深さ50センチの土壌はやせてしまった。だからといって、もっと浅いところから栄養分を取るようにはできていないので、セイタカアワダチソウは深さ50センチの乏しくなった栄養分を使って生きていく。だから小さくなってしまった。日本に入ってきて数十年たって、セイタカアワダチソウは土地に合った身の丈で生活する術を獲得した。それが今の姿なのだ。そんなことが書かれていた。 ちゃんと科学的な根拠のある話なのかどうかまでは調べていないのだけれど、仲間を増やそうとして排他的にどんどん生育範囲を広げていったが結局は自家中毒で崩壊してしまうというのも、新しい土地でそこでの条件に合わせて少々姿を変えてでも生きていこうとするというのも、どちらも人間に置き換えてみると、いろいろ考えさせられておもしろい。 今年はもう黄色い花もだいぶ枯れて茶色くなってしまったものが多いが、小さいセイタカアワダチソウをちょっと応援したい気持ちになった。
by roki204
| 2007-11-24 22:39
| ひとりごと
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